(釧路新聞へ掲載)
『要領の悪い子』
小学生の時、通信簿に「作業が遅い」と記された私は、図工の授業は時間内にできずいつも居残り組でした。
物忘れも激しく、ある時はランドセルを持たずに登校してクラス中の笑い者になり、その日の恥ずかしさは今も
覚えています。
要領が悪く鈍い子は、数え切れないほどの失敗と挫折を繰り返し、何事にも自信が無く赤面症で人前で話すのが
苦手な大人になりました。
ですが今は要領の悪い子で良かったと思っております。
仕事でお花の教室をしていますが、人よりも時間がかかって焦る人の気持ちが分かるので、生徒さんには時間を
気にせず花を活けてほしいと思いますし、花バサミを忘れた方にも気持ち良くハサミを貸してあげることができ、
子供の頃はマイナスに思えた性質が今は役に立っているような気がします。
20代の頃は「これを言ったら人からどのように思われるだろう」という事ばかりが気になり、当時は思ったことの
半分も言えませんでした。
今は年を重ね図々しくなり初めての人とも話せるようになり、しおんの会の代表を務めるようになってからは
公衆の面前で話す機会も増えました。
今もそのような時は極度に緊張してその場から逃げ出したくなりますが、心の中でおまじないの呪文を唱えています。
「犬のためのガマン、犬のためのガマン」
数々の場面でこの呪文を繰り返してきましたが、自身のことなら我慢せず逃げ出していたと思いますので、
人間力の弱い私を鍛えるために、犬の保護活動を神様が与えて下さったのかもしれません。
「犬のことでどうしてそこまで出来るのですか?」と聞かれる時があり、「好きだからです」と答えると、「好きだけでは
出来ないと思いますが?」と言われることがあります。
「昔、私は哀れに死んだ犬だったと思うんです」と言いますと皆さん、黙ってにこりとして下さいます。
真っ直ぐな犬の心と深い愛情にはまだまだ遥かに劣る私ですが…。
記 2016年2月3日 ドッグレスキューしおんの会・代表 福澤