(釧路新聞へ掲載)


ユウヒ

3月5日、私の犬ユウヒが鹿猟のハンターに銃で撃たれ命を落としました。
即死状態だから苦しまずに逝ったと獣医さんが言っていましたが、
雷などの大きな音をとても怖がる犬だったので、私が代わってあげたい思いでした。

子犬で保護した時のユウヒは、後ろ足が骨折し尿石症にかかっていました。
いじめられていたのか、首輪や棒のようなものを見ると狂ったように鳴き叫び、
首輪を付けるのに2ヶ月、リードでの散歩ができるまで6ヶ月、
他の人が触れるようになるまで2年かかりました。

何をするにも時間のかかったユウヒですが、心を開いてくれてからは色々と協力してくれ、
飼い主を噛む犬が人に逆らうと抑えてくれたり、不明になった犬の匂いをたどり探してくれるなど、
いつの間にか私はユウヒを頼るようになっていました。

自然が好きな私は犬たちを連れてよく森に散歩に行きました。
2月中旬、いつもより深く森に入り戻ろうとした時「ギャー!」とすさまじい声がし、
慌てて走って行くと、声の主は生後2ヶ月くらいの野犬の子でした。
逃げる子犬を雪をこいで追いかけながら、「子犬を捕まえて!」と犬たちに叫ぶと、
保護犬レオが子犬をくわえ捕まえてくれました。
少し離れた場所でまた叫び声がし行ってみると、私の犬の星子とユウヒが
もう1匹の子犬を囲んでいました。

全部で5匹の子犬を保護し、人に馴れるように世話をしたところみな人懐っこくなり、
先日2匹の子犬に飼い主さんが決まりました。

ユウヒが森で捕まえた子はまだ飼い主さんが見つかっていませんが、
ヒカルと名付けたその子に、「ユウヒが良い飼い主さんを見つけてくれるからね。」と話しています。

折りしも2年前の震災があった日にユウヒを火葬しましたが、
突然愛するものを失った人たちの事を想いました。
震災の記憶は時間とともに薄れてきていますが、どうしようもない悲しみや苦しみ、
やり場のない怒りと虚脱感、胸が張り裂けそうな痛みはなかなか消えずにいることと思います。

4月2日記


  ドッグレスキューしおんの会 代表・福澤