(釧路新聞へ掲載)


ジョイ

  友人の愛犬ジョイが病気で寝たきりになり、一週間前から何も食べなくなったと聞き、会いに行きました。
陽気で人が大好きな犬で、私が行くとしっぽをブンブンふり元気に駆けて来たジョイ。
しばらくぶりで見たジョイは、パンパンに腫れたお腹で横たわり、動くのは瞳だけでした。
その姿に愕然としましたが、「ジョイ、散歩行こうか」と明るく話しかけ、
足を持ち、歩いているように交互に動かしたり、「会えてうれしいね」と
ジョイのしっぽを持って振ったり、体を撫でてあげました。
帰りぎわ、「おやつ食べる?」とジョイの口に持っていくと、ジャーキーをしっかり噛んで食べ、
友人も驚き喜んでいました。
次の日お天気が良かったので、ジョイを風にあててやりたいと思い、
抱いて外に連れて行き木陰の草の上に座り、膝枕をして寝かせてあげました。
心地よい風に吹かれ気持ちがいいのか、ジョイは寝息を立てて眠りましたが、
腹水でお腹がはれて苦しいはずなのに…と思うと、あまりにも穏やかなジョイの顔に涙がこぼれ落ちました。
毎日のように会いに行っていますが、私の顔を見るたびジョイの瞳が潤みます。
早く苦しみから解放してあげたいと思う時もありますが、必死で生きようとしているジョイと、
献身の介護をする友人を見守ってあげたいと思っています。


東日本大震災から二年半立った9月11日、岩手県出身の青年が、
故郷の役に立ちたいと警察官を目指していることをラジオで話していました。
震災から一年後、青年が大学生の時に、仮設住宅で暮らす母親が橋から飛び降りて自殺したそうです。
津波から助かった母親が自ら命を絶ったことなど、色々な葛藤があり悩んだそうですが、
その時の警察の対応に心打たれ、今は警察学校で学んでいるとのことでした。

オリンピック開催が東京に決まり日本中が歓喜していますが、
一番すべき大切なことがおざなりにされているような気がして、心から喜べないのが正直な気持ちです。


  ドッグレスキューしおんの会 代表・福澤